赫足のゼフが海賊をやめてでも救った同じ夢を持つ少年・サンジ
海上レストラン・バラティエがクリーク海賊団に襲われる9年前にさかのぼります。
客船コックの見習いだったサンジは、”オールブルー”を夢見る少年でした。
世界中の魚が全種類いるという、料理人なら一度は夢見る海のことです。
大人の料理人たちはその存在を否定し、サンジをバカにします。
そんな彼らと共に働きながら、サンジはもう一つ気になることがありました。
彼らは客の残した残飯を食べるのです。
「みんなやめろよ客の残りモンなんて!!」
「食材ならたくさんあるじゃん」
サンジはそう言いながら残飯をゴミ箱に捨てていきます。
「そういうこと言ってるからおめェはまだ半人前なんだ おれたちは海のコックってことを忘れるな」
「海ってのは何が起こるかんからねェ 節約しとくに越した方はねェんだよ」
そんなある日、客船を海賊が襲ってきます。
赫足のゼフ率いるクック海賊団です。
“偉大なる航路”から帰還したゼフは、客船から金品を奪っていきます。
ただし、食糧だけは奪うことを許しません。
食糧に手をかけた部下を叩きのめします。
嵐が勢いを増す中、サンジは死にたくない一心で包丁を手に海賊団に向かい合います。
ゼフに蹴られたサンジですが、足にかじりつき諦めません。
“オールブルー”の夢を口にして。
「お!おれはいつか…!!! オールブルーを見づげるんだ…………!!!」
嵐が予想以上に大きく、そこで大波がやってきてサンジをさらっていきます。
海に投げ出されたサンジを、なぜかゼフは嵐の中海に飛び込み助けにいきます。
そして…
サンジが目を覚ましたのは海の上の岩山でした。
そこでゼフと二人取り残された形になります。
「助けを待つしか道はねェ
運が良けりゃ明日にでも助かる 悪けりゃいつかひからびた白骨になるだけだ」
そう言って5日分の食糧の入った袋を1つサンジに渡します。
もう一つ、ゼフはその3倍はある袋を持っていきます。
大人だから、胃袋が大きいからだと。
自らは反対側の岸へ行き、船を見つけたら連絡しろと言って去っていきます。
それまで一切の接触はなしと言い残し。
小さな食糧の袋と、一人で岩山で生き延びることになったサンジ。
海を見渡せるので大丈夫だろうと思いつつ、5日分の食糧を20日に分けて食べるように考えます。
しかし空腹は1日でもつらく、ハラの虫が収まりません。
25日目、最後のパンはカビが生えていました。
それでも食べないわけにはいかず、先日のコックたちとの会話を思い出します。
(みんなやめろよ 客の残りモンなんて!!
味悪そうな食材もさっき捨てといたぞ)
(どうだいお前も? いらねェよ)
食材を何も考えず捨てていた自分を思い返し、空腹の自分は涙します。
それから…30日目を迎え、50日目…、そして70日目には痩せこけて動くのも大変な状態に。
気力はないものの、ふとゼフはどうしてるか気になったサンジは反対側へと向かいます。
すると、まだ生きているうえに、食料の袋はまだいっぱいに残っています。
それを見たサンジは朦朧とした意識の中、奪い取ろうと決意します。
「何しにきたチビナス………!! 船が見えたのか…?」
「お前の食糧を奪いに来たんだ」
「こんなにたくさん お前だけ」
袋を切り裂くと…
そこにあったのは宝だけでした。
「なんで…? 全部 宝だ………!!」
「食糧は…!? お前今日までどうやって生きてたんだよ!!!
おれより胃袋デカいんじゃなかったのかよ!!」
問い詰めながらゼフを見ると…
「どうしたんだよ その足」
「…お前…!! 自分の足…!!! 食ったのか!!?」
「そうだ」
「食糧は おれにくれたのが全部だったのか!!!」
「そうだ」
「その足なかったらもうお前 海賊やれねえじゃねえか!!!」
「そうだな…」
「余計なことすんなよ!!! おれはお前なんかに優しくされる覚えはねェぞ!!! なんでだよ!!!」
「お前がおれと 同じ夢を持ってたからだ」
ゼフは”偉大なる航路”にオールブルーの可能性を見たと言います。
そしてサンジに時期がきたら”偉大なる航路”を目指せと。
ゼフは衰弱し倒れながら、続けて”今”の夢を語り始めます。
「長い海賊人生でものが食えねェ こういう危機には何度も遭ってきたがその度に思う」
「海のどまん中にレストランでもあったらなァってよ」
「そうだ…この岩の島から生きて出られたらおれの最後の生きがいにそいつをブッ建てようと思ってた」
その後、救出された二人はこの会場レストラン・バラティエを建てたのでした。
「レストランは渡さねェ!!
クソジジイも殺させねェ…
たかがガキ一匹生かすためにでけェ代償払いやがったクソ野郎だ」
「おれだって死ぬくらいのことしねェとクソジジイに恩返しできねェんだよ!!!!」
サンジと店主ゼフとの間にあった絆と夢の物語でした。