「……長い間!!! くそお世話になりました!!! この御恩は一生…!!! 忘れません!!!!」

「……長い間!!! くそお世話になりました!!!
 この御恩は一生…!!! 忘れません!!!!」
サンジ
第68話「”4人目”」

恩に生きた男の堪えきれない涙の別れ

頭領・クリークを倒したルフィ。

一年間のただ働き雑用からも解放され、次の航路に向かう前にサンジを勧誘します。

しかしサンジは乗りません。

「おれはいかねェぞ 海賊にゃならねェ」
「ここでコックを続けるよ クソジジイにおれの腕を認めさせるまで…」

今回のような海賊襲撃があったらという心配もあります。

ゼフは片足、ギンにされたように義足を折られてしまうと無力だからです。

それでも、サンジはいつか”偉大なる航路”を目指すといいます。

そして子どものような顔で聞いてきます。

「お前さ…オールブルーって知ってるか?」

知らないというルフィに、嬉々としてその奇跡の海の話をします。

それを見るゼフ。

「うれしそうな顔しやがって…バカが」


―――食事の時間

ルフィとサンジがやってきて声をかけますが反応はなし、イスもないから床で食べろと言います。

仕方なく床で食べ始める二人。

そこへパティが今朝のスープの仕込みを誰がやったか問います。

サンジが自分だと答えると…

「こんなクソマズいもん飲めねェよ!!! ブタのエサかこりゃあ!!?」

そういって皿ごと床に落とします。

自信作のスープを貶され、怒りをあらわにするサンジ。

しかしそこに他のコックたちも…

「飲めねェ飲めねェ みんな捨てちまえっ!!
ぺっぺっぺっ こりゃ飲めねェ!!」

「てめェら一体なんのマネだ!!!!」

激昂するサンジ。

そこへゼフもやってきてスープの皿を落とします。

「おいなんだこのヘドロみたいなクソマズいスープは!!!
 こんなもん客に出されちゃ店が潰れちまうぜ!!!」

それに食ってかかるサンジ。

「フザけんなクソジジイ!!!」
「てめェの作ったスープがこれとどう違うってんだよ!! 言ってみろ!!!」

「おれの作ったモンと…?」

そして…

「うぬぼれんな!!!」

ゼフがサンジを殴ります。蹴るではなく。


「てめェがおれに料理を語るのは百年早ェぞチビナス!!!
 おれァ世界の海で料理してきた男だぜ!!!」

料理人の命である手で殴るなど一度もなかったゼフ。

その“手”を使った理由は明確ではありませんが、

料理人としてではなく、ひとりの男として。
あるいは父親としての想いが込められていたのではないかと思います。

ゼフと睨み合い出て行くサンジ。

ルフィが呟きます。

「…このスープメチャクチャうめェのにっ!!」

するとコックたちは次々答えます。

「…んなことわかってるよ
 サンジの料理の腕はここにいる全員が認めてる」

ゼフも答えます。

「こうでもしねェと聞かねェのさあのバカは……!!
 なァ…小僧…

 ………あのチビナスを一緒に連れてってやってくれねェか」

「…………”偉大なる航路”はよ……あいつの夢見るなんだ」

ドアの裏でそれを聞いていたサンジ。

それからスープをおかわりするコックたちと笑い声を聞き、声を漏らします。


「………丸聞こえだよ………クソ野郎ども………!!」

ただ、それでもルフィは納得しません。
サンジが自ら行くと言っていないから。

次の瞬間、ヨサクが魚とともにバラティエに突っ込んできます。

ナミの行き先がわかったが、危険なため引き返してきたと言います。
ルフィの力が必要だと。

すぐに出発を決めるルフィですが、そこへサンジがやってきます。

「待てよ」

「おれもいくよ 連れてけ」

唖然とする一同を前に続けます。

「つきあおうじゃねェか”海賊王への航路(みち)”
 バカげた夢はお互い様だ おれはおれの目的の為にだ」

こうして、ルフィの船に4人目の仲間が増えたのでした。

コックたちにはこう続けます。

「悪かったなヘタクソな演技までさせちまって」

「…つまりそうまでして追い出してぇんだろ? なァクソジジイ」

素直になれない二人は憎まれ口で話します。

「…フン
 そういうことだチビナス もともとおれはガキが嫌いなんだ
 くだらねェモン生かしちまったと後悔しねェ日はなかったぜ クソガキ」

「は………上等だよクソジジイ せいぜい余生を楽しめよ」

ルフィたちが航海の準備をしている間、サンジは物思いにふけります。
レストランを始めてから今までを振り返りながら。

そして、ゼフもまた…。

そして、旅立ちのとき。

レストランのコックたちが立ち並んで見送る中、サンジは無言で船に向かいます。

「行こう」

ルフィは挨拶はいいのかと聞きますが、いいのだと。

そこへ、ゼフが一言だけ声をかけます。

「おいサンジ」

「!」


「カゼひくなよ」

これまで幾度となく憎まれ口をたたきあった二人。

しかし別れの最後。

一言だけのこの言葉がサンジの心をうち・・・

堪えきれなくなったサンジが叫びます。

「オーナーゼフ!!!」

「……長い間!!! くそお世話になりました!!! この御恩は一生…!!! 忘れません!!!!」

それからはみんな堰を切ったように涙を流し、賑やかな門出になったのでした。

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