もう泣かないと決めたナミが堪えきれず流した涙
アーロンの支配から逃れるため、1億ベリーで村を買うという無謀とも言える目標を立ててきたナミ。
8年かけて、今では9千3百万ベリーを貯めるにまで至りました。
あと7百万ベリー。
あと1回の航海ですべてが報われる。
（アーロンから解放されるんだ……!!!）
（ベルメールさん そしたら私やっと…!! 心の底から笑えそうな気がするよ…!!!）
その裏で、政府からネズミと呼ばれる海軍大佐がやってきました。
ネズミ大佐はナミの家に向かっていきます。
家に着いた大佐はナミと遭遇し、ナミを”犯罪者”と呼びます。
ただし、海賊としてではなく海賊から宝を盗む”泥棒”という意味合いで。
「わかるかね？罪人から盗んだ物ならば当然その盗品は全て我々政府が預かり受ける」
海賊を取り締まりにきたのではなく、盗品を没収しにきたと言うのです。
家に入って探そうとする彼らに向かってナミは叫びます。
「……どうして……!? これが今 海軍のするべき仕事なの!!?」
「あいつらの支配でこの島の全員が『奴隷』にされてるのよ!!?
その目前の大問題を無視して”泥棒”一人から盗品を巻き上げることが政府の意向なの!!?」
そしてついにお金のありかであるベルメールのみかん畑に立ち入ります。
「汚い手でベルメールさんのみかん畑に触るな!!!」
「私のお金はお前達になんか渡さない!!! ………あのお金は…」
そう言いかけたところで、ゲンゾウが口を開きます。
「この娘の金はこのココヤシ村を救うための金だ!!!! それでも貴様等に金を奪う権利があるのか海軍!!!」
ゲンゾウは、そして村の皆はナミの行いの真相を知っていたのでした。
しかし敢えてダマされたふりをしていたと言います。
もしナミがここを逃げ出したいと思ったとき、村の期待が足を引っぱってしまうからと。
ナミは村を想い、村人たちはナミを互いに想っていたのでした。
それでもネズミ大佐は止まりません。
アーロンは怖くもなく、隠されているのが1億ベリーだと知っていたのです。
そう、ネズミ大佐はアーロンの差し金だったのです。
それを知ったナミはアーロンのもとへ駆け出します。
「アーロン!!!!!」
血相を変えてアーロンに飛び掛かるナミ。
「どういうことよ!!! お金の上の約束は死んでも守るんじゃなかったの!!?」
「ん？守るぜ？ …おれが約束をいつ破った？」
「おれが約束をいつ破った!!? 言ってみろ!!!!」
悔しさがこみ上げますが、アーロンの言葉で我に返ります。
これを知った村人たちは戦いに出てしまうと。
勝ち目のない戦いに。
ナミは村に戻りながら噛み締めます。
（ゲンさん…!!みんな…!!お願い…!!! 早まらないで…!!!）
（生き抜かなきゃ…!! 何もかも終わっちゃう!!!）
そして精一杯つくった笑顔でこういうのでした。
「もう少しだけ待ってよ!! 私また頑張るから!!! はは…
もう一度お金を貯めるから!!! 簡単よ 今度は…」
その献身的な姿に涙が止められないゲンゾウ。
ナミを抱え告げます。
「もういいんだ………!!! 無駄なことくらいわかってるだろう…我々の命を一人で背負って……よくここまで戦ってくれた………!!!
お前にとってあの一味に入ることは身を斬られるより辛かったろうに………!!!」
「よく戦った お前はこのまま村を出ろ」
そういってナミだけでも逃げるように促すゲンゾウやノジコ。
短剣を向けて止めようとするナミですが、誰も止まりません。
そうして全員でアーロンの根城へ向かっていくのでした。
これまでの苦労を踏みにじられたナミ。
アーロン一味の証である入れ墨が入った左肩を、自ら傷つけます。
アーロンへの怒りを込めて。
それを止めたのは――
ルフィでした。
ナミはルフィに対して言います。
「なによ…!! 何も知らないくせに…!!!」
「うん 知らねェ」
「あんたには関係ないから…!! 島から出てけって……!! 言ったでしょう!!? う…う……!!」
「ああ言われた」
「……………………!!! ルフィ………」
そこから絞り出すようにナミは言います。
「助けて…」
そこには大粒の涙を流し、助けを求める少女がいました。
その言葉を待っていたルフィ。
大切な麦わら帽子をナミにかぶせ、今までため込んだ息を吐き出すように全力で答えるのでした。
「当たり前だ!!!!!」
もちろん、ルフィだけでなく仲間全員で。
